NPO法人を設立する際、多くの人が内閣府や都道府県が用意している「モデル定款(ひな型)」をベースに組織のルールを決めます。
そのモデル定款に従うと、「事業計画」と「活動予算」の決定権は『総会』にあると定められているケースがほとんどです。
「最高意思決定機関である総会(正会員の集まり)で予算や計画を決めるのが、一番民主的で正しいNPOの姿だ」
そう思うかもしれません。しかし、実務を20年以上経験してきた私から言わせれば、このルールを盲信してそのまま定款に組み込んでしまうと、将来、組織の成長を揺るがす「大きな機会損失」を招くリスクがあります。
組織を硬直化させないために、知っておくべき「定款設計のリアル」をお伝えします。
明日までに回答がほしい!「おいしい話」が舞い込んだらどうする?
NPOを運営していると、年度の途中で予期せぬ「おいしい話」が舞い込むことがあります。 おいしい話といっても、怪しい儲け話のことではありません。例えば、以下のようなケースです。
- 「当初の計画にはなかったけれど、貴団体のミッションにぴったりの素晴らしいイベント企画がある。費用は出すから、ぜひ来月実施してくれないか?」
- 「急遽、非常に有意義な社会貢献活動のチャンスが巡ってきた。計画外の経費は少し持ち出すことになるが、団体の実績として絶対にやっておきたい!」
このような、NPOの理念に合致した「渡りに船」のチャンスです。 しかし、ここで問題が発生します。そのイベントや活動は、春の総会で決めた「事業計画」にも「活動予算」にも含まれていないのです。
もし定款で、事業計画や予算の決定権を「総会事項」にしていた場合、このチャンスを掴むためには「臨時総会」を開かなければなりません。
民主的な手続きが、スピード感を殺すという現実
臨時総会を開くとなると、以下のような法的な手続きを踏む必要があります。
- 理事会を開催し、臨時総会の招集を決定する
- 正会員に対して、期日の1週間〜10日前(定款の定めによる)までに招集通知を発信する
どんなに事務局が夜徹しでハイスピードで動いたとしても、実際に総会を開催できるまでに最短でも2週間近くかかってしまいます。
しかし、世の中の「おいしい話」や「絶好のチャンス」というのは、得てして「今週中に返事がほしい」「来月には開催したい」といった、短期間での回答を迫られるものです。総会を開いている間に、そのチャンスは他の団体に流れてしまうか、立ち消えになってしまうでしょう。
これでは、社会を良くするためのNPOが、自ら作った「民主的すぎるルール」によって手足を縛られ、チャンスをドブに捨てているようなものです。
機動力を最大化する裏ワザ:「理事会事項」への変更と会社法の知恵
この機会損失を完全に防ぐための解決策は、定款を作る段階(あるいは定款変更)で、事業計画と活動予算の決定・修正権限を「理事会事項」にしておくことです。
経営の実務を担う「理事会」に権限を委譲しておけば、突発的なチャンスに対しても圧倒的なスピードで対応できるようになります。
「でも、理事会を開くのにも数日前の通知が必要では?」と思われるかもしれません。 ここに、法律のプロとしての実務の知恵があります。
実務のリアル(法律の知恵): 定款に「理事会の招集は5日前までに通知する」と書かれていたとしても、会社法の理事会規定が類推適用されます。つまり、**「理事の全員が出席し、手続きに異議を唱えないのであれば、その場ですぐに理事会を開催して決議して良い」**というルール(瑕疵の治癒・招集手続きの省略)が認められているのです。
つまり、理事長が「全員今すぐ集まってくれ!」と声をかけ、理事全員の同意があれば、その日のうちに即日理事会を開催し、新しい事業計画と予算の追加を有効に決議できるのです。これなら、明日までの締め切りの案件にも余裕で間に合います。
もちろん、事後的に総会で「今年度はこのような突発的なチャンスがあり、理事会決議で実施しました」と正会員にしっかり報告・説明する誠実さは必要です。しかし、「事前の縛り」で打席にすら立てない状態を作るより、組織の機動力を活かしてチャンスを掴みに行く方が、結果として団体を応援してくれる正会員の期待に応えることにも繋がります。
豊中市で機動力のあるNPOを立ち上げたい方へ
定款は、ただ行政のひな型をマネして作ればいいというものではありません。10年、20年と生き残り、社会にインパクトを与え続けるためには、ガバナンス(統治)を効かせつつも、現場が素早く動ける「実務に即した設計」が不可欠です。
なお、豊中市でNPO法人の設立や役員変更の手続きを行う場合は、豊中市コミュニティ政策課で必要書類をご確認ください。
また、豊中市立市民公益活動支援センターで相談をすることもできます。
当法人(PriReg)も豊中市を拠点に、こうした「表面的な書類づくりでは見えてこない、実践で戦える定款・組織の設計ノウハウ」を無償の助言というかたちで地域の市民活動団体の皆さまに共有しています。
【当法人(PriReg)の相談受付に関する大切なご案内】 当法人は、豊中で活動する市民活動団体がNPOの設立や運営に関して「助言(アドバイス)」を求めてこられた場合に限り、無償にて相談に応じます。
ただし、行政書士法に基づき、当法人(NPO法人PriReg)が「定款変更手続きの代行」や「申請書類一式の作成請負」といった法的実務を受託することは一切行いません。また、代表である私個人の立場としても、これらの行政書士業務を無償で引き受けることはございません。
あくまで「運営で行き詰まらないための知恵をアドバイスする無償相談」となります。
「ひな型通りに作ったけれど、運営がガチガチで動きづらい」「これから豊中でNPOを作りたいが、失敗しない定款の組み方を知りたい」という方は、ぜひお気軽に当法人の無償相談へ知恵を借りに来てください。